自死遺族になってから友達に会えなくなった | シンパス相談室

自死遺族となってから、これまで親しくしてきた友人に会えなくなったという方は多くいらっしゃいます。今回は、友人に会えなくなったという点について考えてみたいと思います。

 

なぜ友人と会えなくなったのか

「辛い時こそ支え合うのが本当の友達」という言葉がありますが、自死遺族に関してはこれは当てはまる場合と、そうでない場合があります。それは、「自死遺族」が持つある種の特殊性から来ています。

(1)根掘り葉掘り聞かれる

自死遺族の友人の多くは、自死遺族がどのような思いをして毎日を過ごしているか、友人と会うのにどれだけ勇気を振り絞ってきたかについて、理解がありません。このため、一般的な「生活に起こる大変な出来事」と同じように、色々と事実を聞いて来ようとする場合があります。

  • 誰が
  • なぜ
  • いつ
  • どこで
  • どのように
  • どんな方法で

家族の自死に直面した自死遺族が、友人のペースで、いわゆる5W1Hに事実を聞かれて、それに答えねばならないのはある意味拷問です。

(2)意見される・批判される

物事を解決する方法を議論するのであれば、「これまでのやり方で良くなかった点を洗い出して改善する」ことが必要かもしれませんが、自死遺族の心の対処はビジネスではありません。

この点に配慮ができない友人が、「あなたがあの時こうしていればよかったののでは」「**が足りなかったのではないか」「**が良くなかったと思う」など、起こった事実について品評する、つまり間接的に批判された場合、自死遺族が再び辛い思いをします。辛い思いをしている中で、勇気を出してきたのに、なぜさらに辛い思いをしなければならないのか、と。

(3)的外れの励まし方をされる

以前、自死で失った人の代わりはいないのに、的外れの励まし方をされるという記事にも書いたのですが、自死遺族の辛さについて理解がない人は、的外れの励ましをして、さらに自死遺族を苦しめてしまいます。

多くの人は自死遺族となった苦しみを理解しているわけではない、また自死遺族となった友人に会うために、ことさらの準備をしてきているわけではないので、的外れの励まし方をされる確率はそう低くはないのです。

(4)幸せを「見せつけられる」気がする

友人にとって悪意は全くなくても、「自分が失ってしまった大切な人が、友人にはいる」というだけで、会いたくないと感じることがあります。

  • お子さんを亡くされた方が、お子さんが元気な友人に会う。
  • 配偶者を亡くされた方が、配偶者が元気な友人に会う。
  • 親御さんを亡くされた方が、親御さんが元気な友人に会う。
  • 兄弟を亡くされた方が、兄弟が元気な友人に会う。

友人は、目の前で一生懸命話を聞いてくれている、嫌なことは一つも言わない。むしろ自分によく共感してくれる。しかし、とはいっても、自分は大切な人を失ったが、友人は失っていない。羨ましく思う。そして、そう思ってしまう自分が駄目だ、と思う。こうした気持ちを持つ人は少なくないのです。

また、家族以外についてもあります。

  • 自分は辛く苦しい日々を過ごしているが、友人は元気そうにしている。
  • 自分は仕事もままならない状況だが、友人は普通に仕事をしている。
  • 自分はおしゃれする精神的な余裕もないが、友人はおしゃれして会いに来てくれている。

こうした精神的、物理的な余裕をみせつけられてしまうことも、会いたくないと思う理由になります。

(5)困らせたくない

今まで、友人とはよい関係できた。ただ、自死遺族となった自分と友人が相対して、「どのような言葉をかければよいのか」「どのような表情をすればよいのか」「何を言ってよくて、何を言ってはいけないのか」など、あれこれ考えさせるのは心苦しい。

また、自分と会ってしまうと、自分の「辛い、悲しい、悔しい」という話を聞くことになり、友人にとってのせっかくの時間が重苦しいものとなってしまう。申し訳ない。

こうした「友人に対する配慮」から、会いたくない、会わないほうがよいと考える方は多いです。

 

会っても大丈夫そうな友人とだけ会う

まず、自死遺族となった人が「友人に会いたくない」と思う時、無理して友人に会う必要はありません。「大切な友人だから、会って何があったのかを伝えなければ」といった使命感から会う人もいますが、大変な辛さを伴うことがあります。自分の心に大きな負担をかけてまで、会う必要はないのです。

「この人なら会っても大丈夫」と思える人とだけ、「今なら会っても大丈夫」というタイミングで会えばよいのです。

人によって、友人と会う時に何を辛いと感じるかは異なります。

例えば、「子供を自死で失ったので、とにかく子供がいる友人には会いたくない」のであれば、「独身で子供がいない友人と会う」「結婚しているが、子供がいない友人と会う」のでよいのです。

「とにかく話を聞いてほしい。意見されたくない」という場合には、「徹底して聞き上手な友人と会う」のでよいのです。

失礼な言い方かもしれませんが、友人の属性や能力、性格によって「会う、会わない」の判断をしましょう。

 

新しい「友人」と会う

特に辛いうちは、これまでの友人とは一切会いたくないという方は少なくありません。そうした場合は、「自死遺族の分かち合いの会」などで知り合った方の中で、「この人なら大丈夫」という方と個人的に会うなど、これまでの友人とは全く別の新しい「友人」と会うようにするのも手です。

自分の過去について、ある意味「知りすぎている」友人と会うのは気が引けるが、過去についてほとんど知らない人であれば「自死遺族として苦しんでいる私」だけを見てくれるし、引け目も感じない。そう考える人は少ないありません。

なお、対面型のカウンセラーと会う、という方法もあります。自死遺族へのカウンセリング経験がある方であれば、会うことで傷つくという可能性は低いので、ある意味安心です。ただ、会っている時間はお金が発生しますし、その金額も安くはないので、「信頼できるカウンセラーがいて、ここぞという時の切り札として使う」くらいの頻度で利用するのがよいかと思います。頻繁に会っていると、多くの人にとっては金銭的に大変かと思います。

 

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