自死遺族になる前は、全く気にも留めなかったようなニュースにより苦しい思いをする方がいます。
今回は、ニュースをテーマにお伝えいたします。
なお、この記事により辛い思いを想起するかもしれない、と思われる方は、以下をお読みにならない方がよいかもしれません。ご注意頂ければと思います。
自死遺族を苦しめるニュース
自死遺族となる前と、なった後では「世界が一変したようだった」と語る方は少なくありません。
そして、毎日見るネットやテレビ、新聞のニュースにより強い感情が想起され、とても辛い思いをする方は非常に多いです。
- 有名人・著名人の自死のニュース
- 自死した家族と同じ方法で死亡された人のニュース
- 同じ年代の方が亡くなったニュース
- 自死した家族と関係のある土地の方が亡くなったニュース
- 同じ日付に亡くなったニュース
例えば、「家族が縊死という方法で自死された」場合、「カルト教団の教祖の絞首刑が執行されました」というニュースは強い感情を想起するニュースとなります。
また、「25歳の家族が自死された」場合、「25歳の方が交通事故で亡くなった」とニュースは強い感情を想起させるニュースになります。
このように、起こったニュースと、自身の家族の自死を関係づけて受け止めてしまい、苦しんでいる自死遺族は、とても多くいらっしゃいます。
関係ないと分かっていても、想起して苦しんでしまう
自死遺族のほとんどの方は、辛さそのものだけでなく、「直接関係ない『死』のニュースと、自分が愛する人が自死したことを結び付け、苦しんでいる自分」そのものに苦しんでいらっしゃいます。
直接関係ない死と、家族の自死を関連づけたい理由はありません。むしろ、一切関係ないものとして認識できれば、苦しみを想起せずに済むのです。
しかし、自然と関連付けてしまう、想起してしまう、苦しみを感じてしまうことを防ぐ方法はないのが実情です。
(外からの情報について完全に身を守る方法はないのは、救急車反応と同じです)
そして、単に苦しさを感じるだけではありません。
「安定した気持ちで過ごしていたのに、ニュースを知ってしまったために、突然苦しみが想起された。結果、その日は以後、何も手につかなくなってしまった」というように、日常が突然中断させられ何もできなくなる場合もあります。
物事が中断させられることにより、生活や仕事に支障をきたしてしまうこととなります。
「関係ない」と指摘するのでなく、「関係ないのに想起してしまい辛い」気持ちに寄り添う
ニュースから家族の自死を想起して辛い思いをしている自死遺族に対して、「ニュースはあなたとは何も関係がない」と指摘してもあまり意味がありません。
それを一番よくわかっているのは、苦しんでいる自死遺族だからです。
よって支える家族としては、「関係ない」と指摘するのではなく、「関係ないと分かっているのに、辛い思いを想起してしまう苦しみ」に共感して寄り添ってみてはいかがでしょうか。
なお、気持ちに寄り添ったからといって、自死遺族の辛さがなくなるわけではありません。
苦しみに寄り添うのは、あくまで「今の辛さを少しでも緩和するため」であり、「辛さの根本治癒」ができるわけではありません。
こうしたニュースに接しても辛さが和らぐようになるには、ある程度の時間が必要です。
さらには、辛さを想起しないようにする本人の意思の持ちよう、努力が合わせて必要になることもあります。
寄り添うことによる効果を過信することはできません。
しかし、周囲の家族には寄り添うことしかできない場面も多くあります。
とはいえ、寄り添ってくれる家族や愛する人がいるのといないのでは、もちろんいる方がよいわけです。
こうした状況では、支える家族は「寄り添って共感する」という行為を過信せず、かといって過小評価もせずに、寄り添って支えるという小さな努力を続けましょう。