家族
自死した配偶者の親族に追い込まれる | シンパス相談室
「あなたのせいで子供が死んだ!」と責める義両親 配偶者の自死に直面した場合の夫、または妻の苦しみは非常に大きなものです。「自分の何が悪かったのだろうか」「どうして打ち明けてくれなかったのだろうか」「なぜ気づけなかったのだろうか」といった自責の念だけでなく、「今後どのように暮らしていこうか」「どのように子供を育てていこうか」「経済的に生活は成り立つのか」といった具体的ですぐに対処しなければならない問題にも直面します。 そして、ここで家族のサポートが得られるのであれば心強いですし、苦しみは減りはしませんが緩和されます。または、助けてくれる人がいない場合は、大変な状態ではありますが、新たな苦しみが作り出されることはありません。 最も大変なケースは、義両親といった配偶者側の親族が敵に回って攻撃してくることです。そして、これは少ないケースではありません。 配偶者の親、つまり義両親からすると生まれたときから育ててきた子供が、独立して、結婚して、そして自死を選んでしまったという大きな衝撃があります。夫や妻を失った配偶者も自死遺族ですが、子供を失った義両親もまた自死遺族です。 もし、義両親と残された配偶者との関係が良ければ、お互い自死遺族になって自分自身のことだけでも大変ではありますが、残された自死遺族同士という絆が生まれます。比較的早くに回復した人、または衝撃が相対的に大きくなかった人が、回復に時間がかかる人をサポートする、傾聴するといったサポートに回ることができます。 しかし、義両親と残された配偶者との関係が良くなかったり、義両親が子供の自死について過度に攻撃的になるような場合、残された夫、または妻が攻撃されることになります。 つまり、「子供が死んだのは、配偶者であるあなたのせいだ」「あなたがしっかりしてなかったから、子供は自死しか選べなかったのだ」と言葉で責めたり、「どう責任を取ってくれるのだ」といった脅迫まがいの攻撃をされることもあります。さらには、何かしらの理由を付けて裁判を起こされることさえあります。 こうした攻撃によってもたらせれる苦しみは、文字通り「地獄のような苦しみ」です。そして、こうした義両親からの攻撃がゆえに、自死した配偶者に対する怒りが非常に強くなるケースが多いのです。 義両親の攻撃を止めさせる方法はないが、助けを求めることはできる 子供が自死を選んだ苦しみから、残された配偶者が攻撃される。ただでさえ配偶者の方は自責の念が強いのに、です。 はっきり言ってこれは大変に理不尽な状況ですが、非常に少ないケースとも言えないのです。 こうした場合、残された配偶者の方が、怒り狂っている義両親に頭を下げて、「自分が悪かった、私のせいです」などと自分で責めることは、回復を遅らせるだけでなく、自責の念を強めることで精神的なバランスを崩したり、「もう生きていたくない」といった更に悪い方向に進んでしまいがちです。 必要なのは、さらなる自責ではなく、自分を守ることです。 もし義両親と距離を置けるのであれば、できるだけ距離を置くようにしましょう。ただでさえ苦しんでいる、残された配偶者の方にとって一番大切なのは、自分を守ることです。愛情や理解、共感ではなく、攻撃してくる人とは相互理解し合えることは難しいのです。 (念のためですが、こうした場合、時間をおいて最終的に相互理解できるようになるケースと、最後まで理解し合えないケースがあります。ただ、攻撃した側は「あの時はすまなかった」で済みますが、攻撃された側は自死遺族の苦しみが倍加するような攻撃をされるので、後に謝られても許す気にはなりにくいでしょう) 自分を守るという前提に立つと、行うべきことは2つです。 1.理解してくれる、守ってくれる人に相談する 自分の両親、兄弟、親戚、親友といった「あなた側の信頼できる人」に相談して「どうすれば攻撃から自分が守られるか」を相談しましょう。例えば、義両親が何度も自宅に押し掛けてくるようだったら、当面は実家に帰って義両親とは一切連絡を取らないことも一案です。 また、義両親からの攻撃にどのように対応するかについての案を、一緒に考えてもらうこともできます。 そして、「義両親は間違っている。攻撃されるあなたに非はない。自死を選んだのは本人であって、あなたが自死させたわけではない」と繰り返し言ってもらうことで、精神のバランスを保ち、過度に自責の念が強まることを抑止できます。 2.弁護士に相談する 信頼できる人に相談しても、それを上回る攻撃をしてくる場合や、裁判沙汰になった場合はまずは弁護士の法律相談を利用しましょう。東京の例を挙げると、東京第二弁護士会が30分5,000円で法律相談を行っています。他の地域でも、30分5,000円前後が相場になります。 どうするば法的に自分が守られるか、どのような対策が取り得るかといった相談をすることができるのと、訴えられてしまった場合にこちら側につける弁護士探しにも役立ちます。 あなたは悪くない。自死を選んだのは本人 繰り返しになりますが、配偶者が自死を選んでしまった場合、残された配偶者が義両親などの配偶者側の親族に責められるのは間違っています。 なぜなら、自死を選んだのは本人だからです。配偶者が選ばせたわけではありません。 よって、配偶者側からの親族に責められている夫、妻がいるとしたら、「攻撃されても仕方ない」のではなく、「自分は理不尽な攻撃を受けている」という認識を持ちましょう。 自分自身を守ること、そのために誰にサポートしてもらうか、これだけを考えてください。
自死に理解のない宗教者に振り回されない | シンパス相談室
宗教者の手のひら返し 普段親交のある宗教施設、宗教団体、宗教者がいて、定期的にお寺や教会などに通っている方から伺う話です。 正式に所属しているお寺や教会などの宗教者の方に、「家族が自死したので、葬儀を執り行ってほしい」というと、「自死は教義違反なので、葬儀はできません」と冷たく言われることがあるようです。 精神的に辛いときに人を支えるのが宗教者の役割なのに、これまで信仰を全うしてきた信徒の方の願いを却下するというのは理解に苦しみます。 しかし、実際にこのような手のひら返しする宗教者がいるのも事実です。 家族が自死したことで、ただでさえ苦しんでいる自死遺族が、精神的な救いを与えるべきはずの宗教者から再度苦しみを与えられるという、大変心苦しい話です。 苦しむ人を救うことより教義の解釈が重要? 私は宗教者ではありませんので、各宗教の教義に立ち入ることはしません。 ただ、人生で最も苦しんでいる人に対して、その苦しみを受け止める、和らげることができない宗教者は、何のための宗教者なのだろうかと思います。 信徒となった方は、定期的に寄付やお手伝いをするなど、お寺や教会と言った宗教施設に貢献されている方が多いです。 そうした方に対して、ある意味裏切りのようなことを平気でする宗教者を許しがたいと思います。 もちろん、宗教なので教義により自死がどのように位置づけられているか、その教義を宗教者がどの程度重んじているかを無視するわけにはいきません。 しかしながら、「教義ではこうだから」と、信徒の苦しみに向き合わない、そして「自死したあなたのご家族は、教えに背いている」といったことまでいうのは、やりすぎではないでしょうか。 精神的な安らぎを与えるはずの宗教者が、その活動を放棄するのであれば、宗教者としてはふさわしくないでしょう。 理解してくれる宗教者は必ずいる しかし、全ての宗教者が自死または自死遺族に理解がないわけではありません。 例えば、キリスト教における自死は様々な観点がありますが、カトリック(イエズス会)の聖イグナチオ教会では、このような集いが過去に開かれています。 遺族に慰めと癒やしを 聖イグナチオ教会で「自死された方々のためにささげる追悼ミサ 例えば、キリスト教徒が普段通っていた教会から「自死をするような人は教えに背いた人なので葬儀はできない」と言われても、別な教会に行くと苦しみを受け止めてもらい、葬儀を引き受けてくれる場合もあるのです。 自死について理解してくれる宗教者は必ずいます。 よって、冷たい仕打ちをされた宗教施設があった場合、そこに無理に固執して傷を広げたり、葬儀を諦めることよりも、寄り添ってくれる宗教者を探して助けを求めることのほうが、適切ではないでしょうか これは単に葬儀だけではなく、葬儀の後も続く精神的な痛み、苦しみからの回復(グリーフケア)の観点からも、理解のある宗教者はあなたにとってよい存在、支えとなる存在となるはずです。 信仰を持たれている方が、自死に関して理解のある宗教者との出会いがあること、そして宗教者からのサポートが続くことを祈ります。
自死遺族が無償で傾聴サポートを受ける方法 | シンパス相談室
当シンパス相談室は、私(長谷川)1人で運営しているため、他の仕事との兼ね合いなどキャパシティーを考え、大変恐縮ですが有料とさせて頂いております。 ただ、1時間で6,000円 (現時点) という料金は決して安くない料金だということは重々承知しております。 自死遺族の中には「1時間6,000円も出せない」という方はいらっしゃるかと思います。そうした方々が利用できる無料のサービスがあります。 グリーフケア・サポートプラザ 東京にあるNPO法人「グリーフケア・サポートプラザ」は、主に寄付により運営されており、自死遺族の話を聞く(傾聴する)ことに特化してトレーニングを積んだスタッフがボランティアで電話対応を行っています。 私の知人に、ボランティアで活動されている方がいらっしゃって、どのような団体なのか、実際にどのような活動をしているのか伺いましたが、非常にまじめで質が高い対応を行っている団体です。 この団体では、週3回「傾聴電話」を行っています。 毎週火曜日、木曜日、土曜日の午前10時から午後6時までの間、複数のスタッフが無償で電話対応を行っています。 自死遺族の方もいれば、自死遺族を支える家族の方も電話されているようですので、経済的にゆとりがない方であっても気軽に利用することができます。 グリーフケア・サポートプラザとシンパス相談室の比較 ご参考までに、グリーフケア・サポートプラザと当シンパス相談室の違いについてまとめてみました。 前提として、私はグリーフケア・サポートプラザをとても尊敬しています。どちらが良い、悪いというつもりは全くありません。 私の願いは一人でも多くの自死遺族の方が、他社の手助けにより苦しみを和らげて欲しいというものです。 グリーフケア・サポートプラザは無料であるという大きなメリットがありますので、もしご利用できる環境にいる方はぜひお電話いただければと思います。 ただ、グリーフケア・サポートプラザより、シンパス相談室のほうが、あなたの回復に役立ちそうだという場合は、当方までご連絡頂ければと思います。
どんなに辛くてもできるだけ食事させ話を聞く | シンパス相談室
食べたくないのが当たり前 家族や愛する人の死によって衝撃を受けた方は、まず多くの方は自分を責めます。そして「自分が生き残って、愛する人が亡くなってしまった。自分が生きている価値がない。生きていていいのだろうか」といった思いが強まります。 そして、こうした思いを頭の中でぐるぐる回っていると、そもそも食欲が出ない、または「愛する人が亡くなってしまったのに、自分だけ美味しいものを食べるなんて罪悪だ」と感じてしまうこともあります。 そうです。自死に直面した直後は、食べられない、または食べたくなくなるのが当たり前、といってもよいくらいです。 ご本人が「食べたくない自分がおかしいのではないか」と思う必要はありませんし、ご家族の方が「これは大変な異常ではないか」と思う必要もありません。 食欲があるならよし。なければ一緒に食事して食べさせる 上記の通り、自死遺族の中でも、自死の直後でも食欲がある方と、食欲がなくなる方と、大きく二通りに分かれます。 もし、食欲があるのであれば、安心してください。 自死に直面することで、精神的には大きな影響を受けていますし、肉体的にも「思うように体を動かせない」「家事ができない」といった影響があるかもしれませんが、必要な栄養分は摂取できています。 細かく言えば、炭水化物、タンパク質、ビタミンなど栄養素をバランスよく取りたいところですが、非常時においてはとりあえず「何かしら食べられていればOK」です。 そして、できれば3食取れていればなおよいですが、もし3食取れていなかったり、食事のリズムが普段通りでなくても、大丈夫です。 そして、もし自死に直面した方が食べられなくなっている場合、色々と状況はあるかと思いますが、ぜひ食べさせてあげてください。 すべて手料理にする必要はもちろんありません。スーパーのお惣菜と、レンジでチンするご飯、コンビニ弁当、デリバリーや出前でも問題ありません。 そして、一緒に食事をしてあげてください。 精神的に大きな打撃を受けているので、食事は進まないかと思いますが、一人でいる時より、他の誰かと食事する方がまだ食が進みます。 そして、食事の際はできるだけ相手の話を聞くようにして上げてください。 食事をしながら、「亡くなった方がこの料理が好きだった」「自分だけ美味しいものを食べて生き残っていてよいのだろうか」「ただただ思い出されて悲しい」といった話を、否定せずに、悲しみを受け止めてあげてください。 もし食事すら難しい場合は、お菓子でも大丈夫です。チョコレート、チップスといった糖分過多、脂肪過多のものでも、エネルギー源にはなりますので食べないよりは絶対によいです。 食事しながら話を聞く 大切なのは、食べやすいものを、食べやすいタイミングで、できるだけ多く食べてもらうことです。 そして、一日のうちにバランスの良い食事がとれる回数を次第に増やしていきましょう。理想的には、朝昼晩3食食べるのが良いですが、急かしてはいけません。 ご家族の方は、ただひたすら回復を信じて、一緒に食事して、辛い思いを聞いてあげてください。 食事はコミュニケーションの場です。辛い思い、やりきれなさを吐き出す場としてとても大切です。 栄養分を取ることに加えて、話を聞く。そして「聞いてもらっている、寄り添ってもらっている」という実感を持ってもらうことは回復への近道です。 連れ添う身としては楽ではありません。しかし、これができたら回復への道を一歩、一歩進んでいることは間違いありません。
生活のリズムが崩れても責めない | シンパス相談室
近しい家族を失った衝撃は、とても大きなものです。多くの方は、これまでに直面したどの精神的なダメージよりも大きな衝撃を受けます。 そして、その中には、生活のリズムを崩してしまう方もいらっしゃいます。 生活のリズムが崩れるのは当然 人生で1、2を争うほどの精神的なダメージ、それも多くの人にとっては突然のダメージを受けてしまうと、生活のあらゆるところで影響がでます。 夜寝られない 悪夢を見る 朝起きられない 一人でいるのが怖い 食事時間が不規則 家事ができない 何事もやる気が出ない ひどく疲れている 生きている意味を見いだせない どうすれば食い止めたのかを延々と考える 自責の念に駆られる 後を追いたくなる 強い衝撃を受けた自死遺族の方は、上記項目の複数に心当たりがあるのではないでしょうか。 支える家族も、「うちの家族にはいくつもあてはまるぞ」と思われるかもしれません。 そうです。生活の何もかもがムチャクチャになってしまい、「朝起きて、一日三食食べて、夜は寝る」といったリズムも吹っ飛んでしまいます。しかし、これだけの辛い思いをしているわけですから、リズムが崩れるのはある意味当然です。 毎日を生き延びることを褒めてあげる 最も大きな衝撃を受けた自死遺族の方は「一日一日を生き延びる」という表現を使うことがあります。 「何とおおげさな」と思うかもしれませんが、そうではありません。本当に毎日を必死で生き延びているのです。 精神的・肉体的に大きく消耗して、正しい判断ができているのかどうかも分からない状態で、毎日必死に時間を過ごす、やり過ごしているのです。 記憶の海におぼれそうになりながらも、それを直視したり、あるいは「直視すべきでない」と判断して別なことで気を散らしたりして、1分、1時間を積み重ねて一日を必死に消費しています。 こうした状態にいる人に対して、「怠けている」「せめて朝はちゃんと起きろ」などといっても逆効果です。自死遺族はそんなことはよく分かっています。でもできないのです。 翼が引き裂かれてしまったのに「どうして翼があるのに飛べないんだ」というようなものです。 責めたり、行動を促すのではなく、「今日も大変苦しいだろうに、一日を生き延びてくれてありがとう」。 このように声をかけてあげてはいかがでしょうか。苦しさを理解し、受け止め、長い目で回復を信じてあげる。こうした態度こそが求められているのかもしれません。 「そんなに甘やかしていいのだろうか」「むしろ悪化させるのではないか」と思われる方もいるかもしれません。 しかし、最初の数カ月、または1、2年程度は信じて回復をじっと待って、支えてみてはいかがでしょうか。 もちろん、状況がどんどん悪化するようであれば、病院やカウンセラーからの手助けを得る必要はあります。投薬も検討すべきです。 ただ、最初から信じないという態度を出すのではなく、信じている、待っている、あなたは絶対に回復できる、ということは何よりも、自死遺族のご家族の力になります。
遺品整理を急かしてはいけない | シンパス相談室
早く遺品を整理することはよくない結果を招く 家族が自死してしまった。家には残された遺品がたくさん。衣服、置物、食器、身につけるもの、化粧品、電化製品などなど。 どれを見てもなくなった家族を思い出してしまう。そして、目に入れるたびに辛い思いがこみあげてくる。泣いてしまう。感情的に不安定になってしまう。体調が悪くなる。 こういう思いに駆られる自死遺族は多いのです。そして、こうした辛い家族、知人、友人、親戚を目にする人は善意からこのように思ってしまいがちです。 「そうか、遺品を見るから辛いことを思い出すのか。辛くても遺品は早く整理したほうが楽になるのではないか」 「いっそのこと全て捨ててしまったほうがよいのではないか」 しかしこれらは全て間違いです。結論から言うと、「遺品整理を急かすと間違いなく良くない結果を招きます」。 冷静でない状況で整理すべきでない 10歳の時に、自死で父親を亡くしたミュージシャンのYOSHIKIさんは、父の自死の直後に家の中から父親の痕跡が全て消されて、父がいなかったものとして扱われるようになった、と言っています。 YOSHIKIさんは1965年生まれなので、2018/3現在、52歳なのですが、インタビューに出て父親について、当時の自分を振り買って話すときに未だに涙を流すことがあります。 このケースだと、自死で一番衝撃を受けたのはYOSHIKIさんである可能性が高いのに、十分なケアを受けられなかっただけでなく、遺品も強制的に全て片付けられてしまったのです。 もちろん、当時は自死遺族に対して十分な配慮や知識がない時代でしたので、ご家族を責めるつもりは全くありませんが、事実としてそうだったわけです。 そして、21世紀の現代でも、自死遺族は「善意から」これと同じことを言われることが多いのです。 例えば、子供を自死で失った夫婦のうち、より精神的なショックが大きい妻に対して、夫が「遺品を見ると辛くなるだろうから、頑張って整理しよう」と切り出してしまうのです。 それも、自死が起こってから数週間、数カ月のうちにです。夫からすると、「何とか妻に早く立ち直って欲しい、辛い思いが少なくなって欲しい、遺品が原因の一つであるならば心を鬼にして整理してしまったほうが長期的に良いのではないか」という妻に対する思いがきちんとあるのです。決して嫌がらせのつもりではありません。 しかしながら、大きな心的ショックを受けた状態で遺品を整理しようとすることは、よい選択ではありません。 その理由は「精神的に不安定な状況で整理すると、一緒に整理する他の人の意見に押し切られる」からです。 例えば「辛い記憶を呼び起こすのであれば、全て捨ててしまったほうが良い」といった意見です。 冷静な判断力がない時には、そうした意見も正しいのかなと思ってしまいがちですが、後から「全て捨ててしまわなければよかった」と思っても、もう遅いのです。取り返しがつきません。 取り返しがつかない、ということは、自死遺族としてのダメージからの回復を長引かせることになります。 なので、自死遺族として最も苦しんでいる家族の近くにいる方は、遺品整理を急かさないでください。 たとえ一番苦しんでいる家族が「全部捨ててしまいたい」といっても、「いったん落ち着いてからまた向き合おう。いったん棚上げにしておこう」と、言ってあげてください。 遺品整理には年単位かかる覚悟を持つ 自死遺族の苦しみから回復するには何年かかるでしょうか。 自死遺族としての強い苦しみ、悲しみは一生なくなることはありませんが、「自分のことを自分でできるようになる」「日常生活を営めるようになる」というレベルの回復であれば、早い人で数カ月、長い人だと数年というのが一般的ではないでしょうか。 遺品整理を行うのは、この数カ月、または数年という最初の一段階回復してからにすべきです。 そして、周囲の家族が「早く遺品整理をしよう」と急かすのではなく、本人が「遺品整理をしたいと思う」と言ってくるまで待つのがよいでしょう。 周囲からの圧力が全くない状態で、「遺品整理をしたい」と言ってくるのを待つわけなので、周囲の家族からすると「いったいいつになったら遺品整理を始められるのか」という思いに駆られることもあるかと思います。 自死で亡くなった家族がいなくなった後も生活は回っていて、収納スペースが必要になったりすることもあります。 ですが、ここはぐっとこらえて、遺品整理についてはあれこれ言うのはやめましょう。 また、本やネットなどで読んだ知識を元に「普通はXカ月くらいで遺品整理できるらしいよ。2年も経過したのにまだ遺品整理できないなんて」といった「他人との比較」もやめましょう。 苦しみや悲しみの深さ、そしてそれがどのように症状として出るかは人によって違います。 遺品整理に時間がかかるからといって、回復が遅い、回復のために努力していないというわけでは全くありません。 言及せず、責めず、急かさず、他人と比較せず、じっと待ちましょう。
「自死遺族を支える」家族の苦しみを共有する | シンパス相談室
ご家族や近親者が自死で亡くなられた場合、親、子供、兄弟、近い親族そして親しい友人など、多くの方が強く影響を受けます。 例えば、息子さんが亡くなられた場合、ご両親、兄弟、いとこ、叔父叔母、祖父母、学校の友達、会社の同僚などが、強い抑うつ感を訴えたり、精神的に不安定になることもあります。 そして、一番大変なのは「自死によって一番大きな衝撃を受けた自死遺族」の方です。 通常は、親、子供、兄弟が該当します。1人の方が自死されると、家族全員が強い衝撃を受けます。ただ、その衝撃には個人差があります。 例えば、息子が自死で亡くなった際、父親はなんとか生活をしていけるだけの精神力があるが、母親や精神的に打ちひしがれるというケースです。 こうした場合、父親は自分も胸が張り裂けるほど辛いにも関わらず、母親である奥様を支える必要があります。 これまで自死遺族というと、最も辛い人に焦点が当たっていました。しかし、辛い人を支える人も、実は大変な困難にいることが多いのです。 周囲は「時が経てば解決する」「(自死した方が)天国から見守ってくれている」「辛い思いから解き放たれて自由になった」などと、慰めの言葉をかけてくれますが、そうした慰めの言葉が「慰めになっていない」ケースも多々あります。 また、慰めどころか、「早く立ち直らないと」「しっかりしないと」「立ち上がって自分の夢に向かわないと」などと、回復を急き立てるような人もいます。 そして、自死という特別な事情もあります。自死に対する偏見があるため、なかなか近しい人や友人に自死があったこと自体を打ち明けられない、そんなケースもあります。 「家族が助け合って、一番辛い人を支えてあげて」などと言われても、「ではどうやって支えればいいのだ、私も毎日本当に辛い」という方も多いはずです。 シンパス相談室の存在意義はここにあります。 私たちは、安全な状況で、辛いご家族を支える方に寄り添い、辛さを理解し、共感し、皆様の心を痛み、辛さを緩和するお手伝いをします。 シンパス相談室の「シンパス」は、「共感」と言う意味のシンパシー(sympathy)から来ています。 自分より辛い家族がいると、自分が辛いとはなかなか言いにくいものです。辛い人の前で、「私も辛い」といっても、相手の救いにはなりません。 あなたより辛いと感じている人は、あなたを助けるだけの余力がないのです。 だからこそ、シンパス相談室であなたの辛さを話してみませんか。 私は、自死により母を失った妻を支えて、ここまできました。あなたと同じ辛さを経験しています。 心からお役に立ちたいと思っていますので、ぜひご連絡ください。