自死遺族の方が、自死された方を見送り、その後ご遺骨をどうすべきか悩まれてしまうことがあります。
以下では、個人的な経験についても踏まえながらご説明いたします。
急いで埋葬しなくていい。自分の心に従う
自死により亡くなった方のご遺骨について悩まれている方は、似て非なる悩みをお持ちであることが多いです。
例えば、関係が良好だったご家族がが自死された場合、ご遺骨を埋葬する踏ん切りがつかない方は多くいらっしゃいます。
「埋葬してしまうと、愛する人が本当にいなくなったことを認めてしまう気がする」
そうおっしゃった相談者の方もいらっしゃいます。
また、家族の間でご遺骨の埋葬を早く進めたい方、逆にまだ埋葬したくない方で意見が割れることもあります。
当相談室では、自死遺族となられたご家族の全員が「埋葬してもよい」という心境になるまで待った方がよいとお伝えしています。
一度埋葬してしまったら、その後再度埋葬しなおすことはかなりの労力がかかりますし、埋葬方法(例えば海洋散骨など)によっては埋葬しなおすことが不可能となります。
先祖代々のお墓があれば、そこに入れるのがよいのか、または故人の性格や希望などを考慮したうえで別な埋葬を考えるべきなのか。
こうしたことに冷静に向き合える自死遺族の方は少ないでしょう。愛する人の自死による感情の荒波の中にいて、埋葬のことまで考えを向けられない方も多いのです。
葬儀を終えたから、49日が過ぎたから、1年が経過したから、というように何かの節目で「早く埋葬したほうがよい」という圧力が、別な自死遺族からかかることもあります。
しかし、一般的な区切りと、それぞれの人の心の区切りのタイミングは必ずしも一致しません。
世間の尺度に無理に合わせることはありません。急ぐこともありません。本当にもう埋葬してもよいというタイミングになるまで、お手元にご遺骨を置いて置かれるのがよいのです。
ご遺骨に毎日語り掛けることで、愛する人の死を受け入れたという方もいらっしゃいます。
また、自分が亡くなるまで生涯ご遺骨を手元に置いておかれる方もいます。
どう埋葬したいのか、したくないのか。
一度決断してしまうと、取り返しがつかないことです。
よって、他の誰かの言うことに従うのではなく、自分の心に従いましょう。
手元に置いて置けないが埋葬したくない場合
もし、手元にご遺骨は置いて置けないが、埋葬したくないという方は、ご遺骨の一時預かりサービスを利用するのがよいでしょう。
墓苑などが、安価な費用でご遺骨を預かってくれます。
なお、このサービスの多くは、墓苑の集客活動の一環として行われることが多いですが、ご遺骨を一時的に預かってもらったからといって、その墓苑と契約をしなければならないわけではありませんのでご安心ください。
ちなみに私は、首都圏の某墓苑のサービスを利用して、非常に安価な金額で、自死で亡くなった家族の遺骨を預かってもらいました(なお、預かり期間終了後、その墓苑とは契約していません)。
ご遺骨を引き取らなくてもいい
関係が良好でなかった家族が自死した場合の話です。
どうしてもご遺骨を引き取りたくない、という方もいらっしゃいます。そうした場合は、火葬の際にご遺骨の引き取りを拒否すれば、火葬場により埋葬され、ご自身が埋葬する必要はなくなります。
ちなみに、ご遺骨の引き取り拒否は珍しいことではなくなってきています。
亡くなった方との関係が良好でなかった場合だけでなく、葬儀を簡素化したい、墓を作りたくないといった方々も率先して引き取り拒否をしています。
納得して決断を
心理的に不安定な状態で、慌ただしく事が進んでしまうと、大きな声を出す人の意見に引っ張られそうになります。
しかし、そこで「私はまだ決めたくない。待って」という勇気をぜひ持ってください。
一度埋葬してしまうと、基本的に取り返しのつきません。
そうなる前に、声をあげてください。
どんな決断であれ、納得した決断をされることをお祈りしています。