私事になりますが、自死した家族の何度目かになる命日が過ぎました。
今回は、命日反応に対する家族の対応のポイントについてお伝えします。
命日が近づくにつれ感情の動きが大きくなる
今回は、自死遺族となり強い衝撃を受けている家族がいて、その家族を支える側の視点でお伝えします。
まず、当然のことですが、自死遺族となったその日のことは強い衝撃とともに記憶されます。
これは生涯忘れることのない記憶です。関係が近ければ近いほどそうです。
しかし、時間の経過とともに、自死遺族となった日の記憶の濃度は薄まっていきます。
自死遺族となった直後は毎晩悪夢にうなされて、命日となった日のことを鮮明に思い出していた方であっても、時間の経過とともに、記憶の鮮明度合いは薄まります。
自死遺族となった方を忘れるわけでもありませんし、自死遺族となった日の出来事を忘れるわけではありません。
ただ、1年前はずいぶんと鮮明に、具体的に覚えていた記憶でも、記憶の一部はやや抽象的に、ぼんやりとしてきます。
そして時間が経つとともに、鮮明さ度合いは徐々に落ちていきます。
もちろん、記憶の鮮明さ度合いが減るとともに、苦しみが正比例して減っていくわけではありません。
ただ、自死遺族として向き合うことで、徐々に死を受け入れていき、急性の苦しさや感情の激動は減っていきます。
命日反応は、平時には抑えることができる、または抑えられるようになった感情が、再び劇的に動くタイミングです。
例えば、「3月15日」という日はこれまで何の意味も持たなかったのが、この日に愛する人や家族、近親者が自死して命日になった場合、この日は特別な意味を持ちます。
そして、毎年の命日が近づくにつれ、亡くなった方、または亡くなった日のことをより具体的に思い出そうとしたり、または特に意識せずに思い出されたりします。
普段は忘れていたようなこと、命日に起こったことの細部が頭をよぎります。
多くの自死遺族の方は、他の家族を心配させまいと、こうした感情の動きをそのまま出さずにできるだけ抑えるようにしています。
自分が突然泣いたり、怒りや悲しさをぶつけられたりしたら、他の家族は困るだろうと思うからです。
しかし、感情を完璧に抑えられる人はいません。
そして、抑えようとしても漏れ出てくる感情はあります。
まず、漏れ出てくる感情は、何気ない会話や態度の違和感といった形で表出します。
「あれ、いつもとちょっと違うな」「ちょっと怒りっぽい気がする」「一人で部屋にいる時にずいぶんと泣いていたようだ」といったものです。
そして、こうやって何とか抑えていた感情がどうにもこうにも抑えられなくなると、目の前で突然泣き出したり、怒りをぶつけられたり、嘆かれたりします。
「突然」に見えますが、実は徐々に水位が高まってきて、満ちた水が一気に放出されるように感情が出てきます。
命日が近づいてきたら特段の注意を払う
支える側の家族からすると、命日が近づくにつれ、感情のジェットコースターが再びやってきて、どう対応するのが最も家族の為になるのか困惑することもあります。
どう対応するかについて、最善の解はありませんが、できることはあります。
それは「命日が近づいてきたら、ちゃんと意識して、自死と関係する事柄、関係しない事柄についても刺激しない」ということです。
多くの自死遺族の方は、自死された家族について、自死遺族となった自分について、色々な物事や出来事と関連づけて考えてしまいがちです。
他の人から見ると、「えっ、それって何も関係ないよね」と思えるような事柄であっても、関連づけて辛い記憶として呼び起こしてしまいます。
もちろん、こうした関連づけと想起は、時間の経過とともに頻度や強度は減っていくのですが、命日が近づくと再び強さが増します。
よって、支える側としては、言動や態度に特段気を付け、表情や反応をよく見て接することが望ましいです。
無用な口論やけんかは避けましょう。口論やけんかは強い感情を想起させやすいためです。
と言っても、はれ物に触るような態度だと逆によくないので、態度は自然に、でも注意力を増して過ごしましょう。
平時に命日反応について話しておく
もし、話せるようでしたら、事前に命日反応について話しておくのも良いかもしれません。
「命日が近づくにつれ、感情が大きく変化すると思うのだけど、どう接するのが一番あなたのためになるか、話せるかな」と切り出して、命日が近づいてきたら何をしてほしいか、どう接してほしいかを聞くのがよいかもしれません。
自死遺族の中には、「命日が近づいてきたら、悲しみを再び共有したい」人もいれば、「あまり触れずに過ごしたい」という人もいます。誰にでも当てはまる回答はありません。
よって、各人が何を望んでいるかを聞いておくと、よりよく対応できるかと思います。
もちろん、「悲しみを共有したい」と言っていた人が、近づくとやっぱり「あまり触れられたくない」と感情が変わるかもしれません。
「言っていた通りに対応したのに、違う」と思ってしまうかもしれませんが、もちろんそのことを責めてはいけません。
感情の大波は、実際に来てみないと自分の感情がどう動くか分からないことも多々あるためです。
本人に要望を聞けるようであれば、あらかじめ聞いたうえで準備、対応し、変化があれば即座に対応しましょう。