自死遺族の家族向けの電話相談室をやっている立場で言うのも何ですが、カウンセラーへの依存は望ましくありません。

以下で見ていきましょう。

 

自死遺族カウンセラーのメリットとデメリット

自死遺族の方が苦しみを口にすると、支える家族は何とか苦しみを受け止め、共有し、回復させようと試行錯誤します。

しかし家族から見て、考えていた通りに回復してくれない、支えるのが思ったよりも大変だった、支える側のストレスが大きすぎる、そんな苦しい状況に直面することもあります。いえ、そういう状況に直面するほうが普通です。

支えるのに疲れ果てた家族の一部は「カウンセラーを使おう」というアイデアを思いつきます。しかし、自死遺族向けのカウンセラーもいいことばかりではありません。メリットとデメリットの両方があります。

メリット

  • 家族のエネルギーを消費せずに済む
    • まず最も重要な点を上げます。自死遺族が電話でカウンセラーに相談している間、家族は苦しみを受け止めて疲労する必要がありません。家族は家族で、それぞれ自分の人生や仕事や学業、家事が待っていますので、カウンセラーの力を借りると自分の人生を回せる日が増えます。そして、自分の人生を回せる日が増えると、ストレスは減ります。これはとても良いことです。
  • 外部の人が関与してくれる
    • 家族が話を聞くのと、外部の人が話を聞くのでは別な効能があります。それは、家族以外の人に分かってもらった、理解してもらったという「共感してもらった感」であったり、自分だけが苦しんでいるわけではないことを改めて知る「安心感」だったりします。
  • お金を対価としてもらっているので、プロとして対応してくれる
    • 家族が頑張ってサポートしても、自分の日常がどんどん削られてくると、精神的に疲弊して怒りっぽくなったり、冷静に振舞えないことがあります。また、疲れからか、うっかり言ってはいけない発言をしてしまうこともあります。カウンセラーは、お金をもらって仕事として、プロとして話を聞くので、冷静に、怒らず話を聞く人がほとんどです。
  • 過去の相談の蓄積がある
    • 経験豊富なカウンセラーであればあるほど、多くの自死遺族の苦しみに触れています。また、自身が自死遺族として強い苦しみを経験し、回復し、乗り越えてきた方も少なくありません。

デメリット

  • 高額である
    • 当相談室を例にとると、2018年4月現在で1時間6,000円 (税別)の費用を頂戴しております。この金額より安い電話相談や対面カウンセリングもあれば、高額なところもあります。ただ、共通して言えるのは、毎日電話していたら相当な金額になる、ということです。
    • 例えば、1時間6,000円を毎日1時間電話していたら、1カ月で18万円もかかってしまいます。カウンセリングや電話相談に月18万円を出せる方はそう多くないはずです。
  • 家族がカウンセラーに任せればいいと当事者意識をなくす
    • 良いカウンセラーに出会った場合の話です。自死遺族の方が、カウンセラーに電話した後に元気そうにしていると、「そうか。自分たち家族よりもカウンセラーの方が優秀だから、カウンセラーに任せればいいや」と、カウンセラーに積極的に頼るように勧める家族もいます(特にお金に困っていない家族であればそうです)。良いカウンセラーから、定期的にカウンセリングを受けることは、もちろん悪いことではありませんが、カウンセラーに依存すると、一部の家族は「カウンセラーに丸投げ」してしまったり、「支える力を高めようとしなくなる」のです。家族として、支える責任を放棄してしまう場合もあります。
  • カウンセラーがミスリードする可能性がある
    • カウンセラーの一部は、積極的にアドバイスして、行動や精神の変革を促す場合もあります。これがぴったりはまるとよいのですが、行動や精神の持ちようの変革よりも、傾聴が必要である場合は、逆に自死遺族が追い込まれる場合があります。

 

カウンセラーに依存せず、適度に使う

カウンセラー自体が良い、悪いというわけではありませんが、使い過ぎは間違いなく良くありません(話せる家族が一人もいないが、お金はたくさんある、という例外を除く)。

お金の切れ目は、カウンセリングの切れ目です。いくらよいカウンセラーでも、お金が払えなくなればそこで終わりです。家族とは違います

また、カウンセラー依存になると、支えるはずの家族が、支えるという意識を失ってしまいます。さっさと自分の生活に戻ってそちらの方に集中し、何かあれば「カウンセラーに電話したら?」と当事者意識をなくしてしまうのです。

 

ただ、カウンセラーを使うメリットはもちろんあります。自死遺族本人に合ったカウンセラーが関与することで、自死遺族本人だったり、支える家族の大変さを和らげることもできます。また、当相談室のように、支える側の家族のストレスを減らす、というアプローチもあります。

カウンセラーは魔法の解決策を提供してくれるものではありません。メリットとデメリットをよく理解したうえで「使う」ことが大切です。あくまでも、回復にとって一番大切なのは自死遺族とそれを支える家族であることを忘れないでください。

シンパス相談室 | お問合せはこちらから