支える人に怒りが向けられる

さて、これまで繰り返しお伝えしてきた通り、自死遺族の感情は「悲しみ」「自責の念」だけではなく、より複雑な感情が表出します。例えば、「自分に対する怒り」であったり、「周囲の人に対する怒り」であったりします。

この中には、「あなたが、あの時こうしていれば、助かったかもしれない」的な「もしも」の話もありますし、「自死で私はこんなに苦しんでいるのに、あなたが平然と毎日を送っていることが腹立たしい」といった八つ当たり的なものもあるかもしれません。

しかし、これはおかしなことではありません。自死遺族の感情は、ジェットコースターのようなものです。アップダウン、だけでなく、うねり、もあります。

嘆き悲しんだかと思ったら、今度は支える側の自分を攻撃してくる、そして自責の念について語った後で、今度は故人に対する怒りが表出する。そして、同じことを繰り返す、といった具合です。

支える側からすれば、「辛さを受け止めたい」「回復してほしい」というポジティブな感情でサポートしているはずなのに、時にはいわれのない理由から攻撃されることもあります。

自死遺族を支える大変さは色々な側面がありますが、「感情のジェットコースター」、特に「時には支えてくれる周囲の人を攻撃するほどの感情が表出する」ことは、支える側からすると最も大変なことの一つではないかと思います。

「自分は、回復を信じて善意で支えているはずなのに、なぜ攻撃されねばならないのか」と、時にはウンザリしてしまうこともあるでしょう。

 

怒りはずっと続くわけではない

自死を教唆したのでもなければ、自死した方の周囲の特定の人物に明確な責任がある場合はほとんどないでしょう。

論理的に言えば、支えてくれている周囲の人に怒りをぶつけることは「お門違い」「八つ当たり」です。

しかし、この感情のジェットコースターに振り回されて、あらゆる感情が繰り返し繰り返し表出している自死遺族は、支える人よりももっと辛い思いをしているのです。

自死遺族の方は、支えてくれる人に怒りをぶつけたくて、そうしているわけではない、でも、こみあげる感情を抑えられないのです。そして、感情を抑えられない自分にも嫌気がさしてしまうのです。

とはいえ、こうした怒りを受け止める周囲の方の苦労は大変なものです。いつ、どのような感情が表出してくるか分からない自死遺族に寄り添って、全て受け止めなければならないためです。

特に配偶者の方は大変だと思います。

しかし、もちろん希望はあります。

こうした強い怒り、支えてくれる人に向けた怒りや攻撃はずっと続くわけではありません。

あらゆる感情を表出させることを繰り返していく中で、自死遺族の方は自分なりに愛する人の自死を位置付ける、受け入れていきます。

受け入れるには、数年かかる場合もあれば、もっと長い時間が必要な場合もあります。

しかし、周囲の人に対する、怒りを伴う感情が表出し続けるのは、自死から数カ月から1年程度であることが多いです。

愛する人の自死を受け入れるには、もっと長い時間が必要ですが、急性ともいえる感情のジェットコースターはそこまで長期間続くわけではないのです。

よって、数カ月から1年程度のジェットコースターのような期間は、自死遺族を支える周囲の方は「怒り」に対して「怒り」で反応するのではなく、「怒り」に対して「愛情」「共感」で反応するように努めてください。

 

支える側の辛さを話し、共感してもらうことが必要

とはいえ、「怒り」に対して常に「愛情」「共感」で反応することは難しいです。

これを繰り返していると、支える側のストレスが溜まってしまったり、精神的に追い詰められることさえあります。

もし、あなたが特に好きな趣味があるのであれば、あえて時間を取って趣味などでストレスを発散してください。

また、趣味をしてもストレス発散できない、そこまでの趣味はないという方は、自分の辛さを話せる相手を見つけてください。

ここで大切なのは、「ああしたほうがいい」「こうしたほうがよい」というアドバイスを出す相手は適任ではないということです。

男性に特に多いのですが、辛い話をされるとすぐに「解決策」を探し求めてしまう人がいます。もちろん、これは善意です。

しかし、ちょっと話を聞いたくらいで大きく事態が変わるようなアイデアは出ませんし、むしろそうした解決策の押しつけは「支える側の辛さに共感する」のではなく「事実にどう対応するか」という感情の面が抜けた対応になってしまいがちです。

よって、仕事での優秀さのような「問題解決力が高い」人ではなく、話していると安らぐ「共感力の高い」人に話を聞いてもらいましょう。

 

「大変ですね、よく頑張っていますね、すごいとおもいますよ」。

こういう言葉だけでも、支える人にとっては大きな救いになったりするのです。

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