近しい家族を失った衝撃は、とても大きなものです。多くの方は、これまでに直面したどの精神的なダメージよりも大きな衝撃を受けます。
そして、その中には、生活のリズムを崩してしまう方もいらっしゃいます。
生活のリズムが崩れるのは当然
人生で1、2を争うほどの精神的なダメージ、それも多くの人にとっては突然のダメージを受けてしまうと、生活のあらゆるところで影響がでます。
- 夜寝られない
- 悪夢を見る
- 朝起きられない
- 一人でいるのが怖い
- 食事時間が不規則
- 家事ができない
- 何事もやる気が出ない
- ひどく疲れている
- 生きている意味を見いだせない
- どうすれば食い止めたのかを延々と考える
- 自責の念に駆られる
- 後を追いたくなる
強い衝撃を受けた自死遺族の方は、上記項目の複数に心当たりがあるのではないでしょうか。
支える家族も、「うちの家族にはいくつもあてはまるぞ」と思われるかもしれません。
そうです。生活の何もかもがムチャクチャになってしまい、「朝起きて、一日三食食べて、夜は寝る」といったリズムも吹っ飛んでしまいます。しかし、これだけの辛い思いをしているわけですから、リズムが崩れるのはある意味当然です。
毎日を生き延びることを褒めてあげる
最も大きな衝撃を受けた自死遺族の方は「一日一日を生き延びる」という表現を使うことがあります。
「何とおおげさな」と思うかもしれませんが、そうではありません。本当に毎日を必死で生き延びているのです。
精神的・肉体的に大きく消耗して、正しい判断ができているのかどうかも分からない状態で、毎日必死に時間を過ごす、やり過ごしているのです。
記憶の海におぼれそうになりながらも、それを直視したり、あるいは「直視すべきでない」と判断して別なことで気を散らしたりして、1分、1時間を積み重ねて一日を必死に消費しています。
こうした状態にいる人に対して、「怠けている」「せめて朝はちゃんと起きろ」などといっても逆効果です。自死遺族はそんなことはよく分かっています。でもできないのです。
翼が引き裂かれてしまったのに「どうして翼があるのに飛べないんだ」というようなものです。
責めたり、行動を促すのではなく、「今日も大変苦しいだろうに、一日を生き延びてくれてありがとう」。
このように声をかけてあげてはいかがでしょうか。苦しさを理解し、受け止め、長い目で回復を信じてあげる。こうした態度こそが求められているのかもしれません。
「そんなに甘やかしていいのだろうか」「むしろ悪化させるのではないか」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、最初の数カ月、または1、2年程度は信じて回復をじっと待って、支えてみてはいかがでしょうか。
もちろん、状況がどんどん悪化するようであれば、病院やカウンセラーからの手助けを得る必要はあります。投薬も検討すべきです。
ただ、最初から信じないという態度を出すのではなく、信じている、待っている、あなたは絶対に回復できる、ということは何よりも、自死遺族のご家族の力になります。