私には、自死遺族で苦しんだ家族がいます。
- 家族の自死の原因は自分だと責める
- やりたいことができない。やる力がない。
- これまで楽しかったことが、楽しく感じられなくなる。
- 部屋にひきこもり、何もできなくなる。
- 自宅の2Fから、飛び降りたくなる衝動に駆られる。
妻の言葉でいうと「毎日、地獄のような苦しみ」「一日一日を生きる、やり過ごすのがやっと」という状態でした。そして私は、「妻の辛さに毎日遅い時間まで付き合う」「その後仕事に行く」「料理、買い物、掃除などの家事を全てやる」という状態でいっぱいいっぱいになっていました。私自身、とても辛い日々でした。
夫としては、「妻にできるだけ早く立ち直って欲しい」「再び前を向いて、自分の夢に進んでいってほしい」という思いがありながらも、毎日苦しんでいる妻にどのように接すればよいのか分からず、何度も衝突し、意図せず、傷つけるような言葉を口にしてしまったこともあります。
自死遺族を支える家族には、「このように接するべき」という方法論がある程度はあります。しかし、愛する方の自死に至る経緯、その方との関係性はそれぞれ異なります。よって、「方法論を当てはめて、その通りにカウンセリングする」のではなく、「それぞれの苦しみを理解した上で、支えるご家族が求めるものを提供する」ようにしています。
方法論や、苦しみが癒える過程の順序などは、本を読めば分かります。ただ、支える家族にとって大変なのは、「方法論を知る」ことではなく、「毎日毎日、自分の心を折れさせず支え続ける」ことなのです。これには、相当な精神力、体力が必要です。
自死で家族を亡くされた苦しみから立ち直るのは、最終的にはご本人です。しかし、家族からの支えがあれば、苦しい時間を長引かせず、苦しいながらも再び立ち上がることができるように必ずなります。そこまでの期間、一番近くにいるご家族が踏ん張ることが必要です。
とはいえ、「頑張る」「踏ん張る」と口にしているだけで、支え続けられるほど簡単なものではありません。「毎日地獄のような苦しみ」を味わい、「毎日をやり過ごすことがやっと」という人の苦しみに寄り添う、これは並大抵の苦労ではないのです。
シンパス相談室の方針は、「自死遺族を支える家族」が、「今日を乗り越える」ことができるよう場所を作るというものです。1週間後、2週間後ではなく、今日を乗り切るための場所です。心に浮かぶ途方もない「苦しさ」「辛さ」「やるせなさ」を落ち着けて、再び皆様が愛する家族を支えていけるようになるお手伝いをしたい、これが私の思いとなります。