自死遺族となった方に対して、親族、友人、知人などが、「辛い友人を助けたい」「少しでも気分が晴れる手助けをしたい」といって、助けを申し出てくる場合があります。すべてを疑う必要はありませんが、結婚詐欺、リフォーム詐欺、絵画販売詐欺、高額な自己啓発セミナー販売などに狙われる可能性もあります。

その中に、カルト宗教への勧誘もあります。以下で解説します。なお、筆者は特定の宗教に帰依していないことを明言しておきます

 

まずは疑う

多くの宗教は、おおむね「人としてどう良く生きるか」「困難をどう乗り越えるか」といった根源的かつ答えが出ないテーマについて、宗教的な見地から答えらしいものを導き出して、人の心に安心感をもたらします。

伝統的な宗教の多くは、信仰対象や教義、儀式の方法などは異なりますが、概ね、「家族愛」「隣人愛」「人が困ることをしてはならない」といった内容を重視しており、大きな差はないと筆者は考えています。宗教団体を維持するために、ある程度のお布施や寄付を求めることはありますが、各家庭において大きな負担となる金額を要求することはありません。

しかし、カルト宗教は「強い献金」「勧誘ノルマ」「絶対的な帰依」などを求める点で大きく異なります。カルト宗教を信仰すること自体が悪とはいいませんが、家族や友人関係を崩壊させ、経済的な苦境に追い込まれる可能性が高まるため、筆者は推奨しません。

よって、助け出の申し出については「本当に良い人かどうかはわからない」と、「まず疑う」が正しい対応です。

 

自死遺族がカルト宗教からの勧誘を防ぐ方法

さて、精神的な困難に直面している自死遺族が、友人知人親族からの助けの申し出が「カルト宗教」の勧誘かどうかを見極めるのは難しいです。カルト宗教の勧誘は、団体名を名乗らず、「宗教の勧誘ではない」と嘘をついて行われるためです。

「手助けを申し出てくれた人がいるが、その人のことを詳しく知らない」という場合、その人はカルト宗教とは何も関係ない本当に良い人である場合もあれば、カルト宗教の信者である場合もあります。下記は、そうしたカルト宗教信者からの勧誘を防ぐための方法です。

  • 自分一人で会いにいかない。親族や親友といった長く信頼関係がある人に同席してもらう
  • 相手には一人で来てもらう
  • レストランやカフェなどの公共の場で会う(自宅や見知らぬ場所に行かない)

まず、これが一番大切な内容です。こちらが2名、相手が1名で数的に優位に立つため、強引な勧誘を防げます。加えて下記の点も注意するとよいでしょう。

  • 名前を聞いて、後で検索する(宗教団体のホームページなどで、検索表示されることもある)
  • 自身の個人情報をできるだけ伝えない(住所、電話番号、メールアドレス、勤め先、卒業した学校など)
  • 「次にいつ会う」「すごい人に会わせる」「集会に行く」といった次回の約束をしない
  • 先方が書類を出してきても一切署名しない
  • 物を借りない、もらわない(物を受け取ると、また次回会う口実が生まれる)

また、家族や親友の同席が難しい場合は「会うのを断る」のがよいです。ただ、同席してくれる人がいない場合で、一人で会いに行く際は下記に注意しましょう。

  • 相手には一人で来てもらうよう連絡する
    • 連絡したにもかかわらず、複数人だった場合はそのまま帰宅する
  • 上記の注意事項に加えて、下記に注意する
    • トイレに立つ場合は、飲み物を飲みきってから行く(睡眠薬などを混ぜられる可能性がある)
    • 音声を録音し、後で信頼できる人に聞いてもらう

「そこまでやるか」という内容もありますが、精神的に弱っているときは注意に注意を重ねたほうがよいでしょう。

 

カルト宗教の見分け方

さて、手助けをしてくれた友人知人親族が、「実は私は◯◯という団体に属しています」と、自分から宗教団体名を言う場合があります。この際、この団体は安全なのか、そうではないのかを見極める方法をお伝えします。

  • 「団体名 カルト」で検索して、下記のような内容の有無を確認する
    1. 「◯◯(団体名)はカルト教団です」の多数の被害者の声が出てくる
    2. 多額の献金を求められる
    3. 存命中、または最近まで存命中だった人物が絶対的な信仰対象
    4. 信者以外との関係を断つように求められる
    5. 勧誘ノルマがある
    6. 教義に、一般的な価値観とは反するものが含まれている
    7. 他の宗教団体の信者に対して攻撃的、排他的な姿勢が強い
    8. 集会への参加義務などが多く、活動に多大な時間が取られる

上記の複数が該当した場合、カルト宗教である可能性が高いといえます。

なお、カルト宗教は危険で、伝統宗教は安全かというと必ずしもそうではありません。伝統宗教の宗派であっても、その末端の寺院や協会のトップである宗教者が強欲で、高額なお布施を要求する例は多数あります。実際に、筆者の両親も「精神的な苦境にあった際に、伝統的な宗教の寺院を頼ったら、その対応に際して高額なお布施を要求された」ことがあります。

カルト宗教は絶対危険で回避しなければならないが、伝統宗教はそれに比べればリスクは低い。ただ、絶対安全なわけではない。こう理解するのがよいでしょう。

また、カルト宗教=宗教法人というわけではありません。宗教法人以外の法人格を持っている、または任意団体(法人格がない)であったとしても、内実はカルト宗教である場合が多数あります。このため、「うちは宗教法人ではないから宗教でもカルトでもないよ」と言われても、そのまま信用しないようにしましょう。

 

相手がカルト宗教であることがわかった場合

手助けしてくれていた人がカルト宗教の信者であることがわかった場合の対応です。

  1. 二度と直接会わない
  2. 二度と会話しない(電話、LINE通話含む)
  3. しつこく連絡してくる、自分に直接会いに来た場合は、「もう会いに来ないでください」「しつこい場合は警察に連絡する」と伝え、それで来る場合は本当に警察に連絡する

カルト宗教の信者であっても、社会の一員として暮らしていますので、自身が犯罪者になることを望んでいません。よって、こちらが強硬な態度を見せれば、多くの場合はあきらめて他のターゲットの勧誘に向かいます。

なお、警察に連絡した結果、この程度の話に警察が動いてくれる例は少ないですが、「連絡した」という事実が重要です。しつこい場合は躊躇せずに連絡しましょう。