ご家族や愛する人が亡くなって、時間が経過して命日を迎えるとき、「どのように命日を乗り切ればよいのか」「命日反応とどう向き合えばよいのか」と思い悩む方は多くいらっしゃいます。
以前にこちらの記事を書き、多くの方にシェアを頂きました。
・自死遺族を支える家族は命日反応にどう向き合うか | シンパス相談室
シェア頂いたコメントを拝見する中で、最初の命日をどう乗り切るかは、あまり重視されていない(よく分からないうちに命日になってしまう)ように感じました。
よって今回は、最初の命日に向かう上で、どういう心持ちや備えがあったほうがよいか、という内容に特化して執筆しました。
1.自分はどう過ごしたいのかを考える
多くの方は、最初の命日が近づくにつれ、様々な思いがよぎり大変に辛い思いをされます。
「命日の前でもこれだけ大変なのだから、命日になったらどんなに辛いのだろうか」
そう仰られる方も少なくありません。
命日ならび命日反応を乗り越える、いや、「やり過ごす」上で最も大切なのは「自分はどう過ごしたいのかを考える」ことです。
例えば、「できるだけ命日であることを意識せずに過ごしたい」という方もいれば、「亡くなった愛する人の思い出に浸りきりたい」という方もいます。
「できる限り一人で過ごしたい」方もいれば、「一人だととても辛すぎるので、家族や友人と過ごしたい」という方もいます。
「その日は仕事を休みたい」という方もいれば、「普段と変わらずに仕事をして過ごしたい」という方もいます。
「一周忌をやりたい」「墓参したい」という方もいれば、「儀礼的なものは何もやりたくない」という方もいます。
最初の命日をどう過ごすかについて、全ての人に当てはまる正解はありません。
ご自身が、このように過ごしたいという思いの通りに過ごすべきです。
ご自身が、自分が思う通りにその日1日を過ごした。
命日なので、様々な感情が沸き上がって来るものの、誰に強制されたわけでもない、自分が思う通りに過ごした、という事実が大切です。
2.必要に応じて家族・友人・会社関係に協力を求める
もし配偶者を亡くされた方が、現在一人暮らしであれば、自分が思う通りに1日を過ごすのは容易かもしれません。
しかし、家族がいたり仕事があったりする場合、自分の思いを伝えて理解してもらい、その思い通りの一日になるようにサポートを得ることは大切です。
そのためには、早い段階で「自分が頭の中で考える、思う」だけでなく、「言葉」なり「メモ書き」などで、自分の意思を明確に伝えましょう。
別の家族が、自分とは違う命日の過ごし方を既に準備していた、その準備にはそれなりの労力や費用がかかっている場合は、どうしても他人の意思に引っ張られてしまいますので、注意が必要です。
というのも、家族がいる方は、家族それぞれごとに「どのように過ごしたいか」が衝突することもあるかもしれません。
これは、筆者の個人的な意見ですが、「無理に全員で同じ過ごし方をする」よりも、「意見が分かれた場合は、それぞれがやりたいように1日を過ごす」ほうがよいと思います。
大切なのは、自分の過ごし方とは違う家族を攻撃しないことです。
別の家族からみたら「愛情がない」「儀礼に欠く」「自分勝手でわがまま」と見える場合もあるかもしれません。
しかし、異なる人間同士です。大切な日をどう過ごしたいかが違っても、不思議ではありません。
ちなみに、家族以外になると少し話は変わります。
会社の上司や同僚、友人知人が、理解や共感を持ってくれ、サポートをしてくれるわけではありません。
もし、心からの理解とサポートをしてくれる方がいれば、そうした人には本当の思いを伝えましょう。
そうでない方には「それらしい理由を付けて自分の意思を通す」ようにしましょう。
- 例えば、休む理由付けが必要であれば、「家族の死去から1年が経過するので休みたい」ではなく「体調不良で休みます」でよいでしょう。
理解や共感を持ってくれない人に、正面からぶつかっても傷つき消耗するだけです。
3.「節目」を意識しすぎず、感情と向き合う
命日が近くなるにつれ、「家族や大切な人が亡くなった日」「その日の出来事」を想起して、精神的に辛くなってしまう、感情的になってしまう方もいらっしゃいます。
「1年」という期間が経過したことにより、辛かったその日の出来事、亡くなった後の日々を思い出されてしまうためです。
そして、辛さだけでなく、以下のようなものを感じてしまうこともとても多いです。
- 「1年経過したのだから、そろそろ立ち直るでしょう」という周囲の目や期待
- 「1年経ったのだから、しっかりしないと」という自分自身が持ってしまう義務感
- 「1年経ったのに、精神的には辛くしんどいままだ」という辛い感情
あたかも、1年経ったら色々なことができるようになっている、いや、できるようになっていなければならない、という重圧がのしかかって来るかのようです。
しかし、1年というのは単なるカレンダー上の区切りでしかなく、心の回復度合いとは何も関係がありません。
そして、大切な人を失ったことについて「何をもって回復とするか」は人により異なります。
よって、1年経過したという事実と、「1年経ったのだから」という周囲の期待や自身の感情を結びつける必要はありません。
1年という節目をどれだけプレッシャーとして感じたとしても、プレッシャーを持つことで心の回復が進むわけではないのです。
2年目、3年目のことは考えず、今のことだけを考える
自死遺族の方からは、
- もうすぐ1年経つのに、全く精神的に楽にならない。むしろ悪くなっている気がする。来年、再来年には回復しているのだろうか。
といった辛さを持つ方が多くいらっしゃいます。
しかし、筆者はこう思います。辛さを感じていること、考えること、不安に思うことこそが、ご自身が立ち向かっている証拠なのではないか、と。
人それぞれ命日をどう迎えるか、どういう心持ちかは違います。
心穏やかな人もいれば、そうでない方もいます。
しかし、現在の状況から連想して、将来への不安を増大させて、さらに辛くなる必要はありません。
来年、再来年のことを連想するのではなく、まずは直近の命日と自分の心にだけ向き合うようにしましょう。