何もできない。やるべきことに向かえない、という苦しみ

ある日突然に自死遺族となってしまった方の多くは、自死遺族としての苦しみだけでなく、日々やるべき仕事や家事があるのに、それに向かえないという苦しみにも直面します。

  • 職場に行って、亡霊になったように最低限の仕事はするが、帰宅後何もできない。
  • 取りたい資格があるのに、その勉強に向かえない。
  • 炊事洗濯掃除といった、主婦がやるべき家事を何も行えなくなった。

自死遺族となった苦しみは消化しつつも、自分が進みたい人生に向かうために努力せねば、家族の一員として役割を果たさねば、という責任感や義務感がそうさせています。

家族が「今は大変な時期だから、仕事は少なくしたっていい」「家事は何とかみんなで回すから、今はやらなくても大丈夫」と、優しく言ってくれたとしても、こうした責任感や義務感がゼロになるわけではありません。

こうした思いが強ければ強いほど、「自分はみんなに迷惑をかけている」「申し訳ない」「早く立ち直らないといけない」と自分をさらに責めてしまいます。

自分を責めることは、心的な負担を増やすことですから、回復はさらに遅くなりかねないという事態に直面しかねません。

 

 

義務や責任を果たすことより、心の傷が応急処置が一番重要なこと

仕事において求められる役割を果たしたり、家庭で求められる役割を果たすことは平時においては重要なことです。

しかし、自死遺族となった今は非常時です。非常時には優先順位が変わります。仕事や家庭において役割を果たすことより、自死遺族となった方が心の応急処置をすることが最も重要です。

とはいえ、応急処置といっても楽な作業ではありません。

一定期間は繰り返し思い出し、嘆いて、悲しんで、怒って、無力感を感じ、といった感情のジェットコースターに向き合わねばならないからです。

大変つらい作業、辛い時間です。

しかし、自死遺族となった思いを押し込めて、向き合わずに過ごすと、心の傷を化膿させてしまい、あなたが後に生きていくエネルギーまでも奪ってしまいます。

また、その化膿した心の傷が重しになってしまって、「もう回復した」と思っても飛び立てない、思うように心をコントロールできない、という状態になってしまいます。

応急処置をするための猶予期間はそう長くありません。自死遺族となった直後数カ月から1年くらいが応急処置にかける時間ではないかと思います。

言い換えると、この期間はひたすら応急処置に向き合い、他のことの優先順位を一気に下げるべきなのです。

 

応急処置すべき時間は永遠ではありません。

だからこそ、自死遺族の方は「今は応急処置の時間なのだ。仕事がある程度できなくたって、家事をおろそかにしたって、それでもいい」というくらいの思いを持つと同時に、支える家族も「辛い応急処置に向き合うことを支え、役割を分担する」と決意して、日々を回しましょう。

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