自分にとっては、毒親以外の何者でもない親が、自死により亡くなった。
こうした場合、事態をどのように理解し、誰に助けを求めるのがよいでしょうか。
毒親の自死は、一般的な自死遺族とは異なる
毒親ではない親が亡くなった場合と、毒親が亡くなった場合は異なる点が複数あります。
1.「悲しい」「辛い」「悔しい」以外の感情が現れる
自死遺族にとっての悲嘆の感情、例えば「あの時こうしていれば」「辛さを分かっていなかった」「ただ悔しい」といった感情は、「自分が命を落とすよりも辛い」という人がいるほどの強い感情です。
こうした感情に加えて、毒親が自死した場合の子供は、別の感情が表出する場合が多いのです。
「毒親」という言葉は一般的に、アダルトチルドレンとして育たざるを得なかった子供が、親を許せない、許したくない際に使われる言葉です。
親子という関係性を巧妙に利用し、子供のエネルギーを搾取してきた親への怒り、自分ができもしないことを子供に要求していたことへの怒り、親が子供を使って得たいものを得ていた怒りなどが表出して、親子関係を捉えなおした結果、「私の親は毒親だ」という理解に至ります。
例えば、自分にはとことん甘く、子供には異常に厳しかった「毒親」が自死した場合に、子供が抱く感情は何でしょうか。
「悲しみ」「辛さ」「悔しさ」が表出しないわけではありません。しかし、それと同程度に「自分はあれだけ私に強くあることを求めたのに、あなたの人生を終わりは自死ですか。どんなに辛くても頑張れという親の言葉は何だったのか。親の子育ては無意味で無価値だった」という怒り、「そんな無意味で無価値な子育てを受けた自分は、果たして正常なのだろうか」という恐れ、「一般的な自死遺族と違い、親の死を悲しみ、辛さ、苦しさだけで受け止められない」苦しみなども表出します。
多方向に向いた感情が一気に表出します。それも、一日の間でも時間によって感情の出方が異なります。あちこちに暴走しそうになる感情をコントロールしようとするだけでも、張り裂けそうな苦しみに襲われます。
2.一般的な慰め、共感が逆効果になり、理解してもらえない
「親が自死した」と友人、親戚、カウンセラーなどに言うとよく言われる言葉があります。
- 辛いね。苦しいね。
- 親が自死したのはあなたのせいではないよ
- 親御さんも天国からあなたのことを見守っているよ
- 親御さんはあなたを愛していなかったわけじゃないよ
しかし、毒親が自死した時に子供が感じる感情は、こうした一様なものではありません。
むしろ、このような一般的な自死遺族に対して使われる言葉を言われることで、より一層辛くなったりもします。
毒親を持つ、アダルトチルドレンの複雑な感情は理解されにくいのです。
よって、「自死で親が亡くなった。親は毒親で子供の時にひどい目にあった」といっても、こんなことを言われがちです。
- 亡くなった人を悪くいうものではない
- 色々あったかもしれないが、親御さんは愛情を持っていたんだよ
- 怒りを持つのではなく、許してあげないと
友人、知人、親族といった方であれば、自死遺族に対しての理解がそこまで深くないので、こうした言葉をかけられることは理解できます。しかし、熟練した自死遺族カウンセラーからも、こうした言葉を言われて苦しむ方は多いのです。
毒親が自死した子供は、苦しみを誰に話せばよいか
では、毒親を自死で失った子供は、誰に苦しみを吐き出し、感情の整理をすればよいのでしょうか。
筆者は、「自死遺族カウンセラー」ではなく「アダルトチルドレン・毒親といったテーマに強いカウンセラー」を選ぶべきとい考えます。
毒親に育てられた子供の多くは、「子供でありながら、親の庇護を十分に受けられない」「むしろ、子供が親の代わりをすることを要求された」結果、アダルトチルドレンの症状を呈することが多いです。当然、アダルトチルドレン関連のカウンセラーの多くは、親子関係の複雑さ、子供が受けてきた心の傷について理解がある方が多いです。
筆者の経験的には、「自死遺族について専門性がある人が、アダルトチルドレンの人の話を聞く」よりも、「アダルトチルドレンについて専門性がある人が、自死遺族の話を聞く」ほうが、その苦しみ、辛さを一層理解してもらえるのではないかと考えます。
とはいえ、カウンセラーは玉石混交です。アダルトチルドレンに強いカウンセラーの中から、よい人を選ぶ必要があります。
しかし、アダルトチルドレンのカウンセリングも、自死遺族のカウンセリングと同様、安価ではなりません。
費用的に厳しい場合は、信頼できる友人、知人、兄弟などに協力してもらうという方法があります。
その際には、「私の親の死について話を聞いてもらえないか。なかなか理解してもらうのは難しいので、意見や慰めの言葉は言わないで欲しい。ただ聞いてほしい」と前置きし、協力してもらう人が「善意から発した言葉で傷つく」ことがないようにすべきです。
自死遺族の苦しみはなかなか理解してもらうことが難しく、かつ適切な共感、傾聴、励ましを行うのは難しいものです。
これが毒親の自死となると、その難しさが増します。
だからといって、誰にも理解してもらえない、というわけではありません。良いカウンセラーを見つける、周囲の人に「どのように協力してほしいか」を正しく伝えて話を聞いてもらうなど、苦しみや辛さを軽減する方法はあります。
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