自死遺族向けの電話相談・カウンセリングには多くのサービスがあります。無料であれ、有料であれ、無制限にカウンセリングを受けることはできませんので、どのように受けるのが効果的か考えてみました。
カウンセリングと傾聴の違いを理解する
さて、詳細の説明に入る前にカウンセリングと傾聴の違いについて理解しましょう。
自死遺族向けの無料の電話は、「カウンセリング」ではなく「傾聴」であることが多く、有料になると「カウンセリング」となる場合が多いです。では、カウンセリングと傾聴の意味はどう違うのでしょうか(出典: Google)。
・カウンセリング
悩みを訴える人の相談に応じ、(精神医学の立場から)助言や指導をすること。
・傾聴
(耳を傾けて)熱心にきくこと。
カウンセリングは助言や指導があるが、傾聴にはそれがないのが大きな違いです。では、傾聴よりもカウンセリングの方が優れているのか、というと一概にそうも言えません。
例えば、「とにかく話したい、聞いてほしい、助言やアドバイスをしてほしくない、理解してもらえただけで十分」というのであれば、傾聴のほうが向いています。
逆に、「アドバイスや指導が欲しい、客観的にどうなのか知りたい、どう考えればいいのか、どうすべきなのか理解したい」のであれば、カウンセリングのほうが向いています。
また、段階によって傾聴とカウンセリングを使い分けるということもあります。例えば、自死に直面した初期は傾聴のほうがよいが、時間が経つとカウンセリングのほうがよい、などです(注意:人により違いますので鵜呑みにしないでください)。
まずは自分が、傾聴が必要なのか、カウンセリングが必要なのかを理解しましょう。
どんなカウンセリングがあるか
さて、カウンセリングを大別すると、「無料・電話」「有料・電話」「有料・対面」の3通りがあります。
そして、どの方法でも共通するメリットとしては、「家族のエネルギーを使わずに済む」「外部の人が客観的に対応してくれる」「過去のカウンセリング・傾聴の蓄積がある」です。個別に違うメリットとデメリットについては、以下でご紹介します。
無料・電話
上記でお伝えした通り、無料の電話は傾聴であることが多いです。以前の記事「自死遺族が無償で傾聴サポートを受ける方法」で書かせて頂いた、自死遺族向けの無料電話サービスを提供しているNPOも傾聴です。
無料の電話傾聴サービスのメリットは「無料であること」「傾聴に特化していること(助言や指導がないこと)」「家の外に出る必要がないこと」「場所に依存しない(過疎地でも対応可能)」となります。家の外に出る元気がない時でも対応可能です。
逆にデメリットは、「電話を取る人が毎度違い、指名できないこと」「電話が混んでいる場合は待つ必要があること」「電話を掛けられる時間帯に制約があること」「傾聴のみでカウンセリングではないこと」「あくまでボランティアであること」となります。
有料・電話
当相談室は有料のカウンセリングですが、有料のカウンセリングのメリットとデメリットについても記載します。こちらについては以前の記事「自死遺族カウンセラーに依存しない」も合わせてご覧ください。
有料電話カウンセリングのメリットは、「ボランティアではなくプロが対応」「家の外に出なくても良い」「同じ人がいつも対応してくれる」「時間の融通が利く」「場所に依存しない(過疎地でも対応可能)」です。
デメリットは、「時間単価が高額である」「電話なので延々と話して延長となりさらに高額になりやすい」「カウンセラーの助言や指導が適切でない場合がある」となります。
有料・対面
対面の有料カウンセリングは、電話とはまた違ったメリットデメリットがあります。
メリットは、「対面で対応し、受け取る感情の量が多い」「プロが対応」「同じ人がいつも対応」となります。
デメリットは、「時間単価がさらに高額である」「カウンセラーの助言や指導が適切でない場合がある」「場所の都合上延長できないことがある」などです。
どんな時に使えばよいのか
これらのカウンセリングや傾聴サービスの多くは善良なカウンセラーやボランティアにより運営されており、それぞれ意味があります。
では、どのように使い分ければよいかについて解説します。
まずはじめは「無料・電話」
いきなり有料のカウンセリングに頼る前に、無料の電話傾聴サービスを使うことをお勧めします。
傾聴サービスは1週間のうち数日、時間枠を設けて来た電話を取って対応してくれています。
そこで話してみて、自分の心が少しでも楽になるようであれば、傾聴が役立ったことになります。
もし、傾聴が合っているようであれば、また別な日の時間枠に電話することで、自分の心にたまった重しを傾聴により軽くしてくれます。
無料の傾聴で十分であれば、有料のサービスをあえて使う必要はありません。
気を付ける点としては、カウンセリングは期待できないこと、それから電話を受けてくれる人を指名できないので、前回受けてくれた人が良かったとしても、次回電話した時に受けてくれるとは限らないことです。
次は「有料・電話」
無料の電話傾聴サービスが合わなかった場合、物足りなかった場合は、有料の電話カウンセリングをお勧めします。
ネットで検索すると、この手のサービスは多数あります。ただ、個人でやっている人も多いため、良質なサービスであるかどうかは実際に会話してみないと分かりません。
また、「傾聴に近いカウンセリング」もあれば、「助言や指導が強いカウンセリング」もあります。
自分は傾聴寄りのカウンセラーが良いのか、助言や指導が強いカウンセラーが良いのかを判断しましょう。
そのうえで、ホームページなどからカウンセラーの個性を判断して、自分に合っているカウンセラーを選んで電話しましょう。
カウンセラーが合っているかどうかわからないので、支払う金額は最小(最小時間単位)にしましょう。合っているか分からないうちに、多額の費用を前払いすることは避けましょう。
気を付ける点としては、「もし合わないと感じたら、次回電話しない」ことです。当然と思いがちですが、かなり強引なカウンセラーの場合は、次回の予約を入れさせるように仕向けることがありますので注意してください。
ある人にとって良いカウンセラーであっても、別な人にとっては合わないのはよくある話です。もし、知り合いから「良いカウンセラーがいる」と進められても、合わない場合は断る勇気を持ちましょう。
また、良いカウンセラーに当たった場合はとてもラッキーですが、「時間に区切りなく延長すること」はやめましょう。電話カウンセリングは場所に依存しないため、際限なく延長できてしまうがゆえに危険なのです。例えば、最初の60分は6,000円だが、延長すると料金が倍になるカウンセリングもあります。カウンセラーはできるだけ延長するように引っ張る場合もありますが、こちらから切るように伝えるか、電話開始時にあらかじめ「1時間できるので、1時間たったら教えてください」と伝えましょう。延長を重ねると本当に高額になります。
直接会いたい場合は「有料・対面」
直接カウンセラーに会いに行くエネルギーがあるのは、とてもよいことです。仕事や買い物など、最低限必要な外出以外に、外出ができるようになったということです。
対面のカウンセリングも多数あり、個人でやっている人も多いので質に関しては玉石混交です。
「傾聴型」「助言指導型」などがあるのも、電話カウンセリングと同じです。
合うカウンセラーかどうかわからないので、時間は最も短くすべきなのも同じです。
対面だと、視覚などの音声以外の感覚からカウンセラーのエネルギーが伝わりますので、良いカウンセラーで費用的に問題なければ、お勧めできます。
気を付ける点ですが、場所の都合上、電話ほど延長が容易ではないことがあるので、延長の繰り返しで料金が増えるリスクは低いかと思います。
対面の別のリスクとしては、「別の有償サービス(高額なセミナーなど)」に誘導される危険があることです。色々と理由を付けて、二泊三日のセミナーに高額な料金での参加を誘導されたりします。もし、こうした高額有料オプションの紹介が出てきたら、以後の接触は避けたほうがよいでしょう。
無料・対面は注意
対面のカウンセリングは基本有料ですが、「お悩み聞きます」といった形で、無料でカウンセリングを提供している個人、団体があります。
認定NPOなどであれば信頼性が上がりますが、よく分からない団体が主催する無料カウンセリングサービスには注意しましょう。
裏に宗教団体や、自己啓発セミナーなどが控えている場合があるためです。
まとめ
・「無料電話傾聴サービス」「有料電話カウンセリング」「有料対面カウンセリング」がある。
・興味がある人は、まずは無料電話傾聴サービスを試すことをおすすめ。
・物足りない人は、有料電話か有料対面のカウンセリングをおすすめ。
・カウンセラーがよいカウンセラーか、また自分に合うか分からないので、有料の場合は最小単位の金額だけ支払う(まとめて先払いしない)。
・「無料対面カウンセリング」は、高額オプションを売ろうとするものや宗教関連もあるため、特に注意。
最後に、カウンセラー選びは自己責任です。もし「このカウンセラー大丈夫そうに見えるかな」と思った場合は、家族や友人に聞いてみることをお勧めします。