自死遺族となった直後は、強烈なフラッシュバック、後悔、悲しみ、怒り、悔しさといった感情が想起され、一日をやり過ごすことが特に大変です。
この時期をどう過ごせばよいか、いくつかアイデアをお伝えしようと思います。
一日中想起するのが当たり前
まず、当たり前のことではありますが、自死遺族となった直後は亡くなった家族について、自死について、自死を防げなかったことについて、亡くなった方とのやりとりについてなど、何度も何度も思い出します。
いや、一日中その思いにとらわれている、というほうが適切かもしれません。
そして、いくら精神的、肉体的に疲労していたとしても、思い出すこと、大きく感情を動かすことを止めることはできません。
理解頂きたいのは、このような感情、精神の動きをすることはしごく当然である、ということです。
「明日仕事があるのに」「考えていたって前に進めない」などと自分を責める必要はありません。
自死遺族になるという経験は、多くの人にとって人生で最も辛い経験です。
自分自身が今、人生最大の精神的打撃を受けていることをまず理解しましょう。人生最大の精神的打撃を受けているのですから、思った通りに体も心も動かないのが当然です。
だから、繰り返しになりますが、一日中思いにとらわれている自分を責める必要はないのです。
自死遺族となった直後の時間をやり過ごす方法
では、一人で時間をやり過ごす方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
1.仕事に没頭する
会社で勤務している男性に多い方法です。平日は勤務先で朝から夜遅くまで仕事に打ち込んで、時間をやり過ごすという方法です。
この方法のメリットは2つあります。
1つめは、仕事という金銭的な対価があることに打ち込むことです。
言い換えると、仕事をしていれば金銭的に生活が困窮せずに済みます。
2つめは、仕事でのコミュニケーションがあるということです。
自死遺族として思いにとらわれているだけでなく、仕事上のコミュニケーション、例えば「見積書の作成について確認」「営業資料の提出期限を聞く」「顧客との会話」などが多くあります。これは、自死遺族となった辛さを一瞬でも忘れさせてくれます。
2.時間つぶしをする
会社で勤務していない人が多く取っている方法です。
例えば、「小説を読む」「映画・ドラマを見る」「ネットサーフィンする」といったものです。
このメリットは、何かに没頭している時間があると、一日が過ぎ去るのが早く感じられることです。
例えば、何もせずに一日中自死となった人について想起していると、とにかく辛く時間の流れが止まって感じられます。
しかし、ドラマなどを見ていると時間の流れが早く感じられ、いつの間にか夕方、夜になっていたということもあるからです。
なお、何で時間つぶしをするかで重要なのは「生産的な時間つぶしでなくても自分を責めない」ことです。
例えば、「映画・ドラマを見る」よりも、「就職して仕事を始める」「ギターを練習して修得する」「運動する」のほうが能動的な時間つぶしに感じられるかもしれません。
しかし多くの人は、自死遺族として衝撃を受けている状況で能動的な活動に取り組めない人がほとんどです。
「どうせこれだけ時間があるのだから、何か身になるものをやらないと」と自分を責めてしまうと、せっかくの時間つぶしが自分を苦しめてしまうことになりがちです。
よって、「時間が早く過ぎればよい」と割り切って、自分に合う時間つぶしを見つけましょう。
個人的におすすめなのは、ネット動画です。
アマゾンプライムビデオや、ネットフリックスなど、わずかな月会費(定額制)で膨大な映画・ドラマにアクセスできます。
ドラマなどは、次々と見ているうちに何話も消化して、あわせて時間も過ぎ去っていきます。
楽な姿勢で、スマートフォンやタブレットなどでこれらを見て時間つぶしをするのは悪くない選択肢だと思います。
なお、家の外に出なくても本が読める電子書籍は、次々と購入するとかなりの高額になるので注意してください。
それから、ネットサーフィンは、ついつい自死の苦しみに関連する事柄を検索してしまうので、こちらも合わせて注意してください。
苦しみを少なく、やり過ごせばいい
時間をやり過ごす努力するということは、苦しみ自体がなくなるわけではなく、苦しみを感じる時間を少なくして、特に辛い時期を乗り切るということです。
動画を見ている最中だって、仕事をしている最中だって、自死遺族としての強い感情が頻繁に想起されます。
しかし、何もせずにしているときよりも、没頭するものがあるだけ、想起する時間が少なく済みます。
時間が経っても、自死遺族としての辛さがなくなるわけではありません。しかし、自死遺族となった直後の「毎日をやり過ごす辛さ」は緩和されます。
合法的であれば、どんな方法でもよいです。何とか乗り切って頂ければと思います。