食べたくないのが当たり前
家族や愛する人の死によって衝撃を受けた方は、まず多くの方は自分を責めます。そして「自分が生き残って、愛する人が亡くなってしまった。自分が生きている価値がない。生きていていいのだろうか」といった思いが強まります。
そして、こうした思いを頭の中でぐるぐる回っていると、そもそも食欲が出ない、または「愛する人が亡くなってしまったのに、自分だけ美味しいものを食べるなんて罪悪だ」と感じてしまうこともあります。
そうです。自死に直面した直後は、食べられない、または食べたくなくなるのが当たり前、といってもよいくらいです。
ご本人が「食べたくない自分がおかしいのではないか」と思う必要はありませんし、ご家族の方が「これは大変な異常ではないか」と思う必要もありません。
食欲があるならよし。なければ一緒に食事して食べさせる
上記の通り、自死遺族の中でも、自死の直後でも食欲がある方と、食欲がなくなる方と、大きく二通りに分かれます。
もし、食欲があるのであれば、安心してください。
自死に直面することで、精神的には大きな影響を受けていますし、肉体的にも「思うように体を動かせない」「家事ができない」といった影響があるかもしれませんが、必要な栄養分は摂取できています。
細かく言えば、炭水化物、タンパク質、ビタミンなど栄養素をバランスよく取りたいところですが、非常時においてはとりあえず「何かしら食べられていればOK」です。
そして、できれば3食取れていればなおよいですが、もし3食取れていなかったり、食事のリズムが普段通りでなくても、大丈夫です。
そして、もし自死に直面した方が食べられなくなっている場合、色々と状況はあるかと思いますが、ぜひ食べさせてあげてください。
すべて手料理にする必要はもちろんありません。スーパーのお惣菜と、レンジでチンするご飯、コンビニ弁当、デリバリーや出前でも問題ありません。
そして、一緒に食事をしてあげてください。
精神的に大きな打撃を受けているので、食事は進まないかと思いますが、一人でいる時より、他の誰かと食事する方がまだ食が進みます。
そして、食事の際はできるだけ相手の話を聞くようにして上げてください。
食事をしながら、「亡くなった方がこの料理が好きだった」「自分だけ美味しいものを食べて生き残っていてよいのだろうか」「ただただ思い出されて悲しい」といった話を、否定せずに、悲しみを受け止めてあげてください。
もし食事すら難しい場合は、お菓子でも大丈夫です。チョコレート、チップスといった糖分過多、脂肪過多のものでも、エネルギー源にはなりますので食べないよりは絶対によいです。
食事しながら話を聞く
大切なのは、食べやすいものを、食べやすいタイミングで、できるだけ多く食べてもらうことです。
そして、一日のうちにバランスの良い食事がとれる回数を次第に増やしていきましょう。理想的には、朝昼晩3食食べるのが良いですが、急かしてはいけません。
ご家族の方は、ただひたすら回復を信じて、一緒に食事して、辛い思いを聞いてあげてください。
食事はコミュニケーションの場です。辛い思い、やりきれなさを吐き出す場としてとても大切です。
栄養分を取ることに加えて、話を聞く。そして「聞いてもらっている、寄り添ってもらっている」という実感を持ってもらうことは回復への近道です。
連れ添う身としては楽ではありません。しかし、これができたら回復への道を一歩、一歩進んでいることは間違いありません。